『感染』 著:仙川環

先日図書館で借りてきた、第一回小学館文庫小説賞受賞作である仙川環さんの『感染』を読みました。

感染 表紙

主人公は大学のウィルス研究医である中沢葉月。将来を嘱望されている助教授で外科医の夫・啓介とはすれ違いの生活を送っています。

ある日、啓介と前妻との間の息子・宏が誘拐され、遺骨となって見つかりました。啓介は事件当時、女から呼び出され出かけてから音信不通。

夫を探すうちに今まで知らなかった夫の一面を知っていく葉月。夫を追う警察と新聞記者の友人。透けて見える大学の医学部長の思惑。

宏は連続幼児誘拐殺人事件に巻き込まれたのか?
葉月と啓介の大学で行われている医療界を揺るがす知られてはいけない策謀とは?

医療サスペンスとしての面白さはもちろん、葉月の夫の前妻に対する嫉妬と憧れと哀れみや夫を信じたい、信じられないと揺れる心の葛藤、自分の信じた道を突き進む孤独と強さも丁寧に描かれていました。

登場人物がそれぞれの立場で考え、行動することで大きな事件となっていく。ただの空想話ではなく、実際に起こっていても不思議ではないのかもしれない。何かひとつ違っていたら、違う結果になっていたかもしれないのに…そんな気持ちにもなりました。

何気なく手に取った本でしたが、想像以上に面白く一気に読み終えてしまいました。

病院で診察の合間に読んだので妙にリアリティーがあり、色々と考えを巡らせてしまったことはナイショ。