音楽はタイムマシーンみたいだ。
聴くだけであの瞬間、あの気持ちに戻れるから。
そして、思う。色んなことがあったなぁって。
今の私がいるのは、これまでに出会ってきた人や経験したことがあるから。誰か一人、どれか一つ欠けても、きっと「私」にはなっていないのだろう。
飛び上がるほどに嬉しかったこと、心が引き裂かれそうなくらい悲しかったこと、握った手に食い込む爪の痛さに気づかないほど悔しかったこと…。
思い返せば、何も覚えていないほど毎日を必死に生きていた。そんなときもあったなぁって懐かしく思い出せる時間が私の人生にもあったことが、うれしくて誇らしくて、ちょっと切ない。
40代の自分は、誰から見てもいい大人だ。中身も年相応に落ち着いてきたように思う。むしろ、落ち着きすぎたかな、無難になりすぎたかなとも思う。
「若い頃の私」が鳴りを潜めてしまっていることに気づき、ハッとする。いくら年齢を重ねても、無くならないもの、失われないものはあるはずなのに。
せわしなく過ぎ去る日々の中で懐かしい音楽を聴きながら、たまには昔を慈しみ、今の自分を振り返る時間があってもいいのかもしれない。音楽の力を借りて。